高齢者の増加で訪問歯科が人気になっている

老夫婦 体の健康を考える上でとても大事な部分のひとつに歯の健康が挙げられます。
近年の研究では80歳まで自分の歯を維持できている高齢者は健康寿命も長いという結果もあるほどに、入れ歯や差し歯などの人工的な歯になってしまうよりも自分の歯でしっかりと食べ物を噛むことができるということがいかに全身の健康に影響を及ぼすのかということが明らかになってきました。

もちろん入れ歯や差し歯になったとしてもしっかりとケアをして咀嚼が行える、そして自分の力でのみこめるというのはそれだけで健康的な指標にもなります。
咀嚼によって顎の筋肉が鍛えられたり脳に良い刺激になったりするというメリットもあります。
だからこそ口腔環境の改善と健康な歯の維持というのは非常に重要で、今では未然に歯の健康被害を防ぐために予防歯科という概念が一般的になってきています。
さらに、予防歯科や口腔機能の低下防止を進めるにあたり通院が困難な高齢者を訪問する訪問歯科の需要もまた増加傾向にあります。

現在、訪問歯科に関して患者や介護事業者に専門の情報を提供したり、あるいは実際に訪問歯科を導入しようと検討している医療従事者向けの情報を発信したりしている公式の団体として日本訪問歯科協会があります。
訪問歯科の需要の増加に対応するためそして口腔ケアの普及のために情報提供を行っています。
こういった団体による普及活動によって、要介護者が急増している昨今において訪問歯科を推進する動きがさらに強まると考えられています。

訪問歯科が推奨される背景として一番に挙げられる問題が、要介護認定を受けた高齢者が通院困難な状態にあるという事実です。
高齢者は唾液の量も減少したり咀嚼がうまくできなかったりすることから虫歯になる可能性が高く、これによって歯を失って口腔機能の低下を招いてしまうことがあります。
食べることは毎日の生活に欠かせないものであるからこそ楽しみのひとつとなりうる大事な時間であり、歯を失うということはその大切な楽しみまでも失うことにつながってしまうのです。
そうならないためにも、通院できる状態にない高齢者は訪問歯科を積極的に利用して歯の健康を守っていく必要があるといえます。

厚生労働省によると、要介護者の中で歯科治療を必要としている患者は非常に多くその数は74.2%にものぼると報告されています。
しかしながら、そんな深刻な状況においても実際に治療を受けられている高齢者はわずか26.9%と驚くほど少ないことも併せて報告されています。
この原因として訪問歯科診療を実施している歯科医院が少ないことが挙げられます。
特に居宅歯科診療を実施している診療所はさらに少なく、それどころか減少傾向になってさえいるのです。

需要が高まっているにもかかわらず伸び悩む施設や居宅の訪問歯科をなんとか普及させようと、平成24年には診療報酬の改定によって在宅歯科医療の推進が本格的に着手され始めました。
もちろんそうした動きがあってもなお訪問歯科は不足しているのが現状であり、歯科医療従事者のさらなる協力と制度の整備が求められています。